日本テレビ「行列のできる法律相談所」「有吉反省会」岩下英恵プロデューサー 一番近くでテレビを楽しんでいるただの視聴者。お茶の間プロデューサーです。(G−press)
「笑点」「ザ!鉄腕!DASH!!」から「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」まで、高視聴率番組が並ぶ日本テレビのバラエティー番組。その中で、今年放送13年目を迎える「行列のできる法律相談所」(日曜午後9時※一部地域をのぞく)と、お笑いタレントの有吉弘行さん司会の「有吉反省会」(同10時半※一部地域をのぞく)の両番組のプロデューサーを務めるのが岩下英恵プロデューサーだ。自身を“お茶の間プロデューサー”と語る岩下プロデューサーに、“最強の日曜日”の舞台裏を聞きました。
テレビかラジオかという感じだった。熊本県出身なんですが、テレビかラジオしか娯楽がなくて。ずっとテレビを見ていてただただテレビが好きだったんです。「ウンナン世界征服宣言」とか、「電波少年」(いずれも日本テレビ系)、「夢で逢えたら」「ダウンタウンのごっつええ感じ」(いずれもフジテレビ系)とか……。ほとんどのバラエティー番組をビデオテープにとっていました。家に(テープが)200本くらいあると思います。
経済学部なんですが、東京に来て視野が広がって、やりたいことをやっていました。学生プロレスのお手伝いから、カフェや気になる人の取材をしてウェブで記事を書いたり、イベントをやったり。特に、書くことが好きでしたね。発信する側というか。
2005年入社なんですが、たまたま受かった感じです。ほかは全局落ちているので。現役のプロデューサーやディレクターが面接してくれたと思うんですが、こんな人と仕事したいと思ったのは覚えています。私の面接には、ドラマのプロデューサーの河野英裕さんがいらっしゃった。当時大好きだった「すいか(03年に放送されたドラマ)」の担当者で、その後、同じ熊本出身だと分かって縁を感じました。
ずっとバラエティーです。最初は「笑ってコラえて!」のADとして日本全国をロケしました。ADの仕事は楽ではありませんでしたが、地元の方が温かくて、ご飯もおいしいし、幸せな1年でしたね。特番では、アイドルの女の子3人のサハラ砂漠マラソン挑戦に密着する企画で、女性のADをつけることになって、急に行けって言われて……。それが洗礼でしたね。5日間くらいお風呂に入れず、灼熱地獄の中、砂まみれでロケしました。それから「世界の果てまでイッテQ!」の立ち上げのADをやって、森三中さんと極寒のアラスカでオーロラを見に行ったり、イモトアヤコさんとナイル川の源流を探しにアフリカを旅したり、ベッキーさんとは、芸術巡りでヨーロッパに行ったり、アジアワンコイングルメツアーでメコン川を渡ったり……。「イッテQ!」の2年間は、面白くも過酷でしたね。現地でまったくロケの準備がされてなかったり、事前の話と違ったり、海外では台本にないことが起こりすぎる。だからこそ面白いのかもしれないんだけれど、そんなことばかりでした。
イモトアヤコさんとナイルワニの綱引き対決をさせることになって、でも、アフリカにロープがなくて。何かに使うかもしれないと、私がたまたま日本からロープを持ってきていて、ADやっていて唯一褒められたことです。現場で試行錯誤しながら成立させていましたね。ディレクターは大変だったろうなって思います。ドキュメンタリーの泣き笑いというのは(画面に)出ているのかな。イモトさんもカメラマンもチームとしてロケに挑む感じで、必死でした。
「行列」は毎回テーマも違うし、出演者も違う。私も担当になって3年くらいたつんですが、毎回“特番”という感じで、新鮮で面白いんです。「行列」だからできることがあると思うんですが、カンボジアに学校を建てる壮大なプロジェクトに挑む反面、テレビの前のおばちゃんが喜びそうな下世話なこともやっていますね。話題になることを仕掛けたいと思っていて。放送後、ヤフーニュースのトピックスに上がるのはうれしいですね。
そこはこだわっています。アイドルの橋本環奈ちゃんが話題になったときも、うちの番組に一番に出てくれて。総合演出が面白いことに敏感なんです。キャスティングが命なので、プロデューサー陣も敏感になりますね。北村(晴男)弁護士がまだ話題になる前から「永遠の0」が面白いっておっしゃっていて、(作者の)百田(尚樹)さんを呼ぼうってなって、まだそれほどテレビにご出演されていなかった百田さんも面白がって出てくださいました。園子温監督も早めに出てくれたと思う。この人に会いたい、面白そうという興味をスタッフ皆で意見を出し合って、皆で作っています。
時には、アグレッシブなテーマもやっていますが、人を傷つけないこと。テレビの前の誰かの顔が悲しくならないよう、想像する。番組づくりには、愛があると思います。
「有吉反省会」は自ら“反省”しに来てもらっているので。ADはじめスタッフがテレビ番組やブログをパトロールして、反省すべき人たちを探し出しています。無名ながらインパクトある人、懐かしいあの人、まさか出てくれるとは思ってなかった意外な人…オリジナルのキャスティングに命をかけています。今では、IVANさんら番組発の人気者も輩出できて、嬉しいかぎりですね。
そうですね、「笑点」「真相報道 バンキシャ!」「ザ!鉄腕!DASH!!」「世界の果てまでイッテQ!」の流れで「行列」へ。明日から会社だ学校だのちょっと気分が落ちる日曜の夜に、家族で楽しんで見てもらっているのはうれしいですね。
「行列」は13年目の番組で、総合演出の好奇心が旺盛すぎる。面白いことに敏感でエネルギーがすごいことが、長寿番組の秘訣なのかな。若いスタッフからベテランのスタッフまでその温度が一緒というか。貪欲だと思う。
かなり見ています。見ないと落ち着かないし、気になるものは全部見ちゃう。バラエティー、ドラマ、ドキュメンタリーも見ます。どこかの局の番組の視聴率が良くても、悔しいというよりは、いまだにテレビを見てもらえて誰かに感動与えているんだって。テレビの力を感じられるのはうれしいですね。(2013年に放送されたTBS系のドラマ)「半沢直樹」も「行列」の裏番組でしたけれど、視聴率が40%も超え、こんなに人の心を掴むんだって。いろいろなメディアで「テレビが落ち目になってきた」と言われ始めた時代に入社した世代なので、単純にうれしいですね。
テレビはテレビで面白いものを、お茶の間を見続けて作るだけなんじゃないかなって。自分のことをクリエイターと思わないんです。視聴率で一喜一憂はするけれど、ただただ面白いことをやっていければなと思う。一番近くでテレビを楽しんでいるただの視聴者です。お茶の間プロデューサーです。
自分が女性だからって1度も考えたことはないです。男女関係なくADの仕事をやっていたし、同じくつらいし、同じく楽しいことは楽しいでしょうし。やめたいとかつらいとか思ったことはないです。経験のない見たことない世界ばかりだったので、面白がれていた。必死すぎてそこまで考えが至らなかったですね。持っていてほしいのは好奇心。“面白い”に敏感な人がいいですね。学生時代にやることは夢中になれることを探すことじゃないかなと思っていました。
そんなに野望がないんですよね(笑い)。自分の親が私の番組を見て面白いって言ってくれることですかね。そんなことが続けばいいなと。そして、未来の子供が喜んでくれる番組が作れればいいですね。
聞き手・構成 猪狩 淳一
文・写真 堀池沙知子
いわした はなえ 2005年入社、「1億人の大質問!?笑ってコラえて!」「世界の果てまでイッテQ!」のAD、「満天☆青空レストラン」のディレクターなどを経て、現在「行列のできる法律相談所」「有吉反省会」のレギュラー番組、「24時間テレビ」「日テレ系人気番組NO.1決定戦」「ありえない商品売れる?売れない?」などの特番のプロデューサーを担当
インタラクティブ・プログラム・ガイド(IPG)のG-pressより
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